"Sign 'O' the Times"(1987) / Prince

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世間で言われる「殿下の最高傑作」「80年代ロックの金字塔」な2枚組み'87年作。 映画も併せて、凝りに凝った構成の前作*1が、セールス的にイマイチぱっとせず、映画も大コケ、ツアーも赤字だった、と言う傷心の殿下は、バックバンドThe Revolutionを解散させ、一人多重録音+少々のサポートで、この2枚組みの大作を作り上げるのです。
思うがままにつくったため、殿下の持っていたロックンロール、ファンク、ブルース、フォークな資質が整然と発揮され、どの曲もシンプルで判り易く、キャッチー。 …とは言え、全体的にカラっと明るい曲調が多いのですが、殿下の別人格'Camille'の、ダークな曲調を担わせた(結局はボツになってしまった)アルバムからの流用曲'Strange Relationship'や'If I Was Your Girlfriend'が間に挟まることによって、このアルバムが陰影に富んだ特別な存在になりえたと思うのです。
個人的には、そんなに好きなアルバムじゃないのですが、大盛り上がりのダンスジャムな'It's Gonna Be a Beautiful Night'、しみじみしたフォーキー曲'Starfish and Coffee'や'Forever in My Life'、'Slow Love'や'Adore'のような甘茶大全開の楽曲には、抗えない魅力もあるのも事実で。 天才肌のミュージシャンがとりとめも無く作り、とりあえず詰め込んだ楽曲集、と言う意味では、Stevie Wonderの"Songs in the Key of Life"*2と同じ空気が感じられる、と言えますね。