"Parade"(1986) / Prince & the Revolution

Amazon.co.jp: Prince And The Revolution/Parade: Music From The Motion Picture Under The Cherry Moon: Prince & the Revolution: 音楽
多分、殿下の最高傑作。 「多分」と書いたのは、これに比肩するアルバムは何枚かあるし、いまだに1〜2年に1枚の間隔で、これに近い水準のアルバムを出し続けている殿下だから、いつか越えてしまうアルバムを出してしまうんじゃないか、と言う気もしてるので。 でも、とりあえず1枚最高傑作を、と言う条件なら、自分はこれを選ぶでしょうね…。

前作"Around the World in a Day"*1で大全開になった、「各楽器パートが有機的に結びつかない密室的な音作り」「短い間隔でめまぐるしくコラージュ的に変わる楽曲構成」「刹那的/享楽的な楽曲の裏に潜む切実なメッセージ」は、ここで究極的に研ぎ澄まされるのです。

#1.'Christopher Tracy's Parade'で快活なマーチに乗せて始まったかと思うと、不安感を残したようなエンディングから、#2.'New Position'のおもちゃのドラムに始まり、スチールパンの音色が軽快なリズムで盛り上がったかと思うと、けだるいファンク#3.'I Wonder U'に、その後、妖しさ溢れるバラード#4.'Under the Cherry Moon'へ、と、切れ目無く曲をつないで、いきなりガッチリ聞き手を取り込んでしまい、それ以降もアップダウンの激しい楽曲構成で、全く聞き手を飽きさせないのです。 妖しい極彩色のパレードを、(ジャケのイメージである)モノクロでみているような、この「全く終わらない楽しい悪夢」な感覚こそ、'80sの殿下のアルバムの醍醐味でしょうね。 今となっては、ミュージシャンの一挙一動、音楽のワンフレーズ、歌詞の裏側にあるメッセージに、聴衆が幻想を抱いていた、そんな時代の幸せなスナップを眺める、と言った風情ではありますが…。

#5.'Girls & Boys' / #6.'Life Can Be So Nice' / #8.'Mountains' / #10.'Kiss' / #11.'Anotherloverholenyohead' にJB流儀のリズム/ホーン・アレンジが多用されているので、ロック色強かった"Purple Rain"*2や"Around ..."の反動と見られていた(らしい)1枚なのですが、今となっては、ファンクなアレンジをやったところで、殿下の音楽でしかない、を確認すると同時に、後々の楽曲からも明らかなように、殿下のファンクは、ここで展開されていたようなアレンジから大きく逸脱できないのです。 まぁ、そういう複雑な感情も含めて、私は大好きなのですけれど。

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