"Around the World in a Day"(1985) / Prince & The Revolution

アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ: プリンス&ザ・レヴォリューション: Amazon.co.jp: 音楽

前作*1で大スターの地位を手にした殿下が、その独自のクリエイティヴティと、底意地の悪さを大全開にした、'85年作。
今聴くと、これ以降「プリンスっぽい」と形容される、音作りやメロディは、ここで完成されたような気がします。 バンドが最もまとまっていた時期なのに、ミュージシャン同士の呼吸によるアンサンブル/グルーヴが希薄で、全部殿下の一人多重録音に聴こえてしまう、と言う。 隙間の多い打ち込みの揺らがないドラムのレベルが大きく、ベースが薄く、さらに各楽器の分離が不自然で、有機的に絡まない。 故に、ギターのワンストローク、ピアノの一音、ドラムのバックビート一発、全て「殿下の音」なのです。
「世界一周を一日で」と言うタイトル通り、フォーク/ファンク/ゴスペル/ブルースその他諸々が一枚のアルバムに収まり、殆どが3分半の曲で構成されているせいか(長いのは朗々と歌い上げるバラード#3.'Condition Of The Heart'、クワイアを従えたゴスペル#8.'The Ladder'位)、めまぐるしく展開し、ジャケのように、「美しいような、歪んだような、原色の世界を猛スピードで飛行、天国のようでもあり、しかも終わりが見えない、醒めない悪夢ようでもある」と言う、病み付きになる聴後感を残します。 それは、それまでの殿下のどのアルバムにも無かった感じ、と言えるでしょう。 これがポップのど真ん中だったのですから、80年代の殿下が発する引力とはハンパじゃ無かった訳です。

*1:"Purple Rain"(1984) / Prince & The Revolution id:halflite:20080425:prince