"Words"(1995) / The Tony Rich Project

Words: The Tony Rich Project: 音楽

The Tony Rich Project名義ではあるけれど、Tony Rich一人で、殆どの楽曲を作詞作曲し、楽器、歌、ハモリを多重録音して仕上げた、まさに“シンガー・ソングライター・アルバム”。

「あまりにも芯が無さ過ぎ」と言う人もいます。 まぁ、全くその通りなんですけどね…。 しかし、いつの時代にもロマンティックな、柔らかい手触りの表現を求める人はいます。 事実、これが出た'95年当時、Hip-Hopは、西海岸のギャングスタ・ラップや、東海岸のプレイヤー・スタンスのラップ(カネとオンナとクルマとシャンペン、のアレ)が全盛、R&Bは露骨かつ即物的な性的表現ばかりで、ブラックミュージック全体が相当荒んでいた時期でもあったし、また一方、ロックの世界でも、オルタナティブ・ロックがどんどん殺伐とした表現に走って行き詰まり、Sheryl Crow*1Lisa Loeb*2等が出てくる時期ともシンクロしていたりもするから、このようなオーセンティックで優しい表現を、アメリカの聴衆は皆、心の底では求めていた結果だと言えますし、ね。

それにしても#2.'Nobody Knows'は今聴き返しても、良いですね。 何気ない日常の一場面を切り取って、ギター一本でさらっと歌って、すぐ盤に閉じ込めたような音楽、そのまんま。 多分、10年後、20後聴いても、同じように良いと思えるでしょう。 それ位エヴァーグリーン度高い楽曲です。

全10曲、40分少々。退屈する前に終わり、「あ、また聴きたい」と思わせる長さも、丁度良くて、「あ、名盤ってこう言う物なのかな」と思ったりもする一枚です。*3

*1:"Tuesday Night Music Club"('93)

*2:"Tails"('95)

*3:2001.06.08に書いた文章を手直ししたものです。